第9回 さよならレ−ルバス 南部縦貫鉄道


<はじめに>

小ぶりなレ−ルバスがのどかに走る南部縦貫鉄道という超ロ−カルな私鉄が青森県に存在している事は随分前から知りながらも、なかなか訪れるチャンスが巡って来ず、ようやくその夢が実現出来たのは大学4年の時でした。
卒業論文の執筆にあたり、ロ−カル私鉄をテ−マに準備を進めていて、全国各地のロ−カル私鉄を巡って来たなかでの初訪問でした。
1日わずか5往復の運行。機械式のレ−ルバス。大きなガマグチを肩に掛けた車掌さん。そして乗客は何と私1人だけという現実に強烈な印象を焼き付けてくれた鉄道でした。
色々な思い出を作ってくれたこの鉄道が廃止になる事を聞き、今回の掲載となりました。

野辺地駅にてキハ102


野辺地駅に停車中の南部縦貫鉄道の元祖レ−ルバスことキハ10形。平日ながらも遠方からやってきたレ−ルファンで賑わっていました。【97・03・19野辺地駅】


<南部縦貫鉄道について>

JR東北本線・野辺地駅から七戸駅まで、20.9キロを結ぶ全線単線非電化の鉄道です。以前は途中の天間林駅が交換駅となっていましたが、現在は全区間1閉塞化されています。
発端は昭和28年に東北本線へのル−ト確保を目的に会社を設立したのが始まりでしたが、資金難で工事はたびたび頓挫。
その後、政府出資の東北開発株式会社が企画した「むつ製鉄」への砂鉄運搬ル−トになることから、東北開発は同鉄道にも出資して、昭和37年に千曳(現西千曳)〜七戸間が開業しました。
ところが政府の方針転換で「むつ製鉄」は解散。貨物輸送も御破算となり、会社更正法の適用を受けての存続となりました。
さらに、これに追い討ちをかけるかのように昭和43年の十勝沖地震により線路が32カ所破壊されるとともに、同年接続している東北本線のル−ト変更が行われてしまいます。
しかし、同鉄道は地震災害を3ヶ月で修復するとともに国鉄の廃線跡を借り受けて千曳(現西千曳)〜野辺地間の路線延長を実現し、幾多の困難を乗り切ってきました。
株主の殆どが沿線自治体で、行政サ−ビス的な副業で経営を続けてきましたが、昭和59年に国鉄の輸送方式転換により貨物輸送が廃止され、さらに利用客の減少、施設の老朽化、借用している旧国鉄用地の返却問題により、ついに5月5日限りで路線廃止が決定してしまいました。
車両は先日鉄道友の会よりエバ−グリ−ン賞を受賞したばかりの昭和37年、宇都宮富士重工製の機械式レ−ルバスキハ10形が最後まで活躍するようです。現在1日5往復の列車が設定されています。


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