第19回 生き残った鉄路の現状 〜蒲原鉄道〜


<はじめに>

新潟県に蒲原鉄道というロ−カル色豊かな鉄道が存在していたのを知ったのはいつ頃のことだったでしょうか。ふと考えてみると私が小学生の時に父親に買って貰った私鉄図鑑で見たのが事のはじまりだったように思います。
更に、その後の部分廃止を知るとこの鉄道への興味が一気に沸き上がり、初めて訪問したのは平成3年9月。新潟交通を初訪問した後に続いての事でした。
最近になって、この鉄道の残存区間においてもあまり長くはないのではないか?という話しを聞き、思い切って今回再度訪問してみることにしました。


蒲原モハ41形(1)

五泉駅のホ−ムで出発を待つモハ41形です。<五泉>


<蒲原鉄道について>

JR磐越西線の五泉を起点に村松まで4.2キロを結ぶ全線単線の電化鉄道です。
もとは大正12年に新潟県下初の電気鉄道として五泉〜村松間が開業し、昭和5年には信越本線の加茂まで21.9キロが開業となりました。
しかし、村松〜加茂間は沿線人口が少なく、モ−タリゼ−ションも進展して沿道の国道も整備されてきたことから昭和60年3月31日限りで廃止となり、現在は大正12年の開業当初の区間のみを残して営業を続けています。
なお、車両については現在モハ31、モハ41、モハ61、モハ71、クハ10の電車群のほか、電気機関車ED1形が在籍しています。


蒲原モハ41形(2)

モハ41形の運転室の内部です。電車はワンマンで運転されますが、路線が短いこともあってか、それほど大規模なワンマン改造はしていないようです。


蒲原モハ41形(3)

車内に掲示されていた手書きの運賃表です。五泉〜今泉間1.2キロ、今泉〜村松間3.0キロという営業距離でこの運賃ですが貴方はどう思いますか?


<凄い電車です!!>

五泉駅から私が乗車した電車は「モハ41」という形式の電車で、この電車は前回訪問したときに乗車した時と同じ電車でした。扉は何と半自動扉なので開けるときは手動となっています。取っ手を思いっ切り引っ張ってみますが、この扉が実に重くてお年寄りにはちょっと酷かな?なんて思ってしまいます。
車内に入ってみると床や内装は木張りとなっていて座席は赤いモケットのロングシ−トとなっています。また途中駅の今泉駅から乗車する乗客には運転士が硬券の乗車券を車内で発売するようになっているので、運転席の後ろに日付を入れるダッチングまでもが装備されています。
いやあ〜凄い電車だなあと思いながらも座席に座って床を見てビックリ。何とすり減った床の隙間から地面が見えているのです。何ともはや言い難い心境でした。因みに車内には「昭和38年西武所沢車輌工場改造」という銘板が付いていました。


蒲原モハ41形(4)

蒲原鉄道唯一の途中駅である今泉駅を出発するモハ41形です。昭和38年に西武所沢車輌工場で改造されたこの電車。釣り掛けモ−タ−音を響かせるとともにパンタグラフをユラユラと揺らしながら雪原の中を走って行きます。<今泉>


蒲原モハ41形(5)

こちらは村松駅のホ−ムで出発を待つモハ41形です。<村松>


村松駅構内

さて、次に車庫を訪問して構内を一望します。<村松>


電気機関車ED1形

庫内には同鉄道生え抜きの電気機関車ED1形が休んでいました。<村松>


<村松駅構内を訪問>

職員の方に許可を貰って村松駅の車庫に行ってみました。
まず目についたのは古い朽ちかけた木製の車庫で、そこには蒲原鉄道唯一の電気機関車であるED1形とモハ61形という電車が入っていました。再塗装されたのでしょうかモハ61形電車は随分とツヤツヤしていました。
車庫の中の電車を撮影し終えると次は側線に止まっている電車の方へ向かってみました。側線には3両の電車が留置されていて、手前(村松方)からモハ71、クハ10、モハ31の3両が何と連結されたままで留置されているではありませんか。
今回の目的のひとつに元国鉄のガソリンカ−の車体を利用しているというクハ10形の撮影がしたかったのですが、残念ながらモハ71とモハ31にサンドイッチにされる形で留置されていたので、運転台正面を撮影することは出来ませんでした。しかし、車体側面などはしっかりと撮影出来ましたので、「今回はこれで良し!!」という事にしました。
更に構内片隅には分厚く雪を被った色褪せた廃車体(モハ12形)も止まっていたので、そちらの撮影も行ってから村松駅の待合室へ戻りました。


蒲原モハ61形

更にED1形が入っている車庫の左隣にはモハ61形が止まっていました。<村松>


蒲原モハ71形

側線に目を移すとモハ71形をはじめ3両の電車が留置されているのが見えました。<村松>


蒲原クハ10形

こちらは元国鉄のガソリンカ−の車体を利用した制御車クハ10形です。車内は伺い知れませんがセミクロスシ−トになっているそうです。モハ71形とコンビを組んで朝方1往復だけですが運用されているそうです。<村松>


蒲原モハ31形+クハ10形

何とモハ31形(左)とクハ10形(右)が連結されたままで側線に留置されています。<村松>


蒲原モハ12形

また、構内の片隅には廃車となったモハ12形が雪を分厚く被っていました。<村松>


<おわりに>

蒲原鉄道も御多分に漏れず廃止の噂が出てきているようですが、じつにロ−カル色豊かで乗るも良し、撮るも良しの鉄道だと思います。皆さんも一度蒲原鉄道を訪れてみてはいかがですか?
尚、最後に蒲原鉄道では他の乗客が乗っている時に車内を撮影する事は禁止しているようです。私も注意されてしまいました。運転士さんに訪ねてみると「他のお客さんが写真に映るのを嫌がるからで、車内に誰もいなければいいよ。」との事でした。


村松〜今泉間

沿線には美しい雪原が広がります。<村松〜今泉>


お粗末さまでした。Back to Top

Back to Home